R.M.S.  Embarking on Fatal Maiden Voyage

寒くなってきましたね。

すこし前のニュースですが、タイタニック号のバイオリンがオークションで約1億6660万円で落札されたという報道がありました。

このバイオリンには悲しい物語があったようです。

 

タイタニック号はイギリスの豪華客船で、1912年に北大西洋で氷山に衝突して沈没しました。

1997年には映画化され大ヒットしていましたね。

劇中では、沈みゆく船の中でパニックを起こしている乗客達を落ち着かせるために演奏を続けた楽団が描かれています。

これが実話なのは有名な話ですね。

楽団長の名前はウォレス・ハートリー、享年33歳。彼にはマリア・ロビンソンという婚約者がいました。

ハートリー氏は、タイタニック号での仕事のオファーが来た時、婚約者を置いて長い航海に出ることをためらいましたが、しがないカフェ・バイオリニストの彼にとって大きなチャンスでもあったので仕事を受けることに決めたそうです。

そんな彼に婚約者のマリアはバイオリンをプレゼントしました。

テールピースには銀のプレートが貼られ、そこにはメッセージが刻まれていました。

For WALLACE

on the occasion of our engagement

from MARIA

(ウォレスへ 婚約の証しとして マリアより)

そのバイオリンを抱えて航海にでたハートリー氏に悲劇が降りかかりました。

1912年4月14日深夜、タイタニック号は濃い霧の中から突如現れた氷山に衝突し浸水、船尾が垂直になった後に真っ二つに折れました。

楽団のメンバーは逃げることなく、乗客のために演奏を続けました。

ハートリー氏は婚約者のマリアを思いながらバイオリンを弾いたことでしょう。

最後に演奏した曲は讃美歌の「主よ御許に近づかん」だったと生存者が証言しているそうです。

事故後、数日たってからハートリー氏の遺体は発見され、彼の背中には革のケースに入ったバイオリンがきつく結び付けられていたそうです。

死してなおバイオリンを手放すことはなかったんですね。

その後バイオリンは婚約者マリアのもとへ帰りました。

マリア・ロビンソンはバイオリンとともに生涯独身のまま、1939年に亡くなりました。

バイオリンはその後何人かの手に渡り、2006年に再び発見されました。

この楽器は海水の影響で再び音を奏でることはできないそうです。

せめて二人の思い出とともに安らかに眠ってほしいと思います。

バイオリンの写真はtitanic violin で画像検索すると見ることが出来ます。

ご興味があれば見てみてくださいね。